小・中学生の学び場、郷中ゼミ

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9月になった途端、鹿児島もすっかり秋の風に。
小学生、中学生は夏休み明けの新学期ですね〜。

そんな今年の夏休み、
なんだかごっつい名前の小中学生向け長期学習イベント(参加費無料)があると聞きつけました。
その名も「郷中(ごじゅう)ゼミ」。

その押し文句は

①学校では学べないことが学べる

②友達同士で教え合う

③自主的な学習が身に付く

④自己主張が出来るようになる

というもの。

タイムスケジュールを見せてもらうと…

10351593_357683421052225_8197552042416394220_n大半である自習時間は、大学生が小中学生の質問にいつでも答えてくれるような時間らしい。
しかし、その他「講義」が設けられていたり、
なにやら「詮議(せんぎ)」とよばれる時間も設けられていたりします。

なんだか塾の自習室やサマー・スクールとは違いそうな雰囲気に興味津津です。

 

さて、「郷中」という言葉にピンときたあなた、かなりの鹿児島ツウですね。
実はこの「郷中ゼミ」、鹿児島県が薩摩藩であった時代につくられた、「郷中教育」という制度が元になっています。

これはすごく簡単に言うと、先輩が後輩に縦割りで勉強を教えるというような仕組みです。
このような場は、ただ勉強を教えあうだけでなく、
例えば「弱い者いじめをするな」とか「お金に執着するな」というような教訓も叩き込む、社会教育の場でもありました。
ふむふむ、郷中教育の現代版ね!ということで、さっそく潜入してきました。

 

 

8月26日午後2時、鹿児島大学のとある教室をのぞくと、、、

お、やってるやってる〜。
今日のスケジュールは、こんな感じ。

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この日の参加者は小学生3名、中学生1名と少なめだったみたい。
スケジュールを通して、毎回平均6〜8名の参加者がいるそうです。

 

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教室の前に立って「ON」という紙を貼る彼が、このゼミ主催者のさとしくん、こと畠中聡志さん(鹿児島大学3年)。
これは「今、集中する時間だよ!」という切り替えを視覚的に促しているのだそう。

早速、自習の時間が始まりました。

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誰かが質問すると、周りの子達も興味深げに話を聞いたりしています。
とある小学生の男の子は、自由研究の課題をまとめていました。

 

あれ、大学生らしき人も勉強しています。

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教えに来てるんじゃないんですか?と聞いてみると、

「自習の時間は、大学生も一緒に自分の勉強をするんですよ〜。
みんなが一生懸命勉強していると、とてもモチベーション上がるんですよね!」

と、学生スタッフのとんぴー、こと中村智美さん(鹿児島大学3年)。

まさにヘルプ・ユアセルフなスタイル。
干渉しないけど、聞きたかったらいつでも聞いてね、という主体性を促すもの。

私が伺った頃には、学生と生徒の間で質問しやすいような信頼関係が築かれていました。
しかも自分も勉強できるって、良いですね〜。
夏休みの宿題なんてない大学生も、自主的に勉強できる良き時間になっているようです。

 

自習時間のこり15分になったころ、こんな紙が。

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これは郷中タイムといって、
「ちょっとここ、どうなの?」
「どういうふうに勉強してるの?」など周りの人に相談しながら進める時間。
引き続き自習するもよし。
時間が設けられるだけでも、話しやすさが変わりますよね〜。面白い。

 

 

やってきた休み時間、男の子たち(学生含む)は颯爽と遊びに行きました。

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さて、このゼミの売りは

①学校では学べないことが学べる

②友達同士で教え合う

③自主的な学習が身に付く

④自己主張が出来るようになる

でした。

②、③は確かに、自習の様子を見て納得。
他校生ともつながって教え合い、このスケジュールの中で自習の習慣も身に付くでしょう。

はて、では①と④は??

 

きっと「詮議」の時間に何かある!

 

休み時間明け、「姿勢、礼!」の挨拶で始まった詮議タイム。
今度は優しそうなお姉さん、ちひろ、こと児玉ちひろさん(鹿児島大学4年)が、おもむろに今日のテーマを話し始めました。

ずばり、「小学生に携帯電話(スマホ)は必要か。」

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そう、詮議とはディスカッションの時間なのです。

「詮議」は検討するとか評議する、というような意味も持っています。
ちひろさんは、この詮議の時間を担当しています。

ひと通り、自己紹介や最近のグッドニュースを伝え合い、改めて打ち解けたところで、
まずはみんな、テーマに対する自分の意見と、その理由を紙に書いてみます。
「理由は最低3つかな。しっかり書いてね!」とちひろさん。

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そして発表し合います。

「小学生は家に帰る時間が早いから連絡用にわざわざいらないんじゃないか。」

「お金とか将来返すことにして、自分で責任持って使うんだったら持っててもいい。」

紛糾する議論。みんな頭を抱えつつ、一生懸命考えています。

 

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話はだんだん、「持つべきか、持たないべきか」から「どう使えばよいのか」という方向へ。

話の流れも「どういうふうにするか、自分たちで決めて?」と促す主催者のさとしくん。

もちろん大学生も参加して、自分の意見を伝えています。

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あっという間に終わりの時間が近づいて、最終的に自分の意見はどうなったのか、もう一度書いて、発表し合います。

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なかには、

「やっぱり(スマホを)持つことには賛成っていうのは変わらないです。でもご飯の時間は見ないようにするとか、勉強するときはお母さんに預けたりしようと思いました。」

というような意見も。

もちろん、これだ!という一つの結論は出ませんでしたが、ちひろさんが意味付けをこめて、こうまとめました。

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「他の人の意見を聞くときに、あ、こんな意見があるんだなぁということを知ってほしいし、大事にしてほしいと思っています。他の人の意見も聞いてみて、それを一回受け止めてほしい。
もちろん、自分の意見も大事にしてほしいから、他の人の意見を聞いて、それでも私はこう思うよ。っていうのであれば、それでいいんだよ。ここではそういう練習ができたらなぁ、と思っています。」

 

うーん、なるほど。深い。
聞く前から否定に入ったり、頭ごなしに否定するのではなくて、一度受け止める。
日々のコミュニケーションの中でも大切そうなことですね。

 

学校で大学生、中学生、小学生が対等にディベートする機会なんてないでしょうし、
子どもたちは特殊な経験値を積んで、新たな吸収もあったことでしょう。

そして、意見を言うなら理由もしっかり言ってみる。そんな練習ができる場としても、最適なようですね。

 

今回の取材日の時間割になかった「講義」の時間には、
大学生スタッフが「お金」をテーマに、年収や税金、お金持ちとそうでない人のお金の流れについて勉強したり、
法律系の学科に通う大学生が、クイズを交えながら「法」の話をしたり。

おもしろ講義、として社会人の方が、里山遊びについてのお話をされたりしたそうです。
そして最終日は、正にこの郷中ゼミ企画・運営をやりきった主催者のさとしくんが、

「小中学生に伝えたいこと」というテーマで、色々なチャレンジしてほしい、周りに合わせなくてもよいし、
夢までの道は色々あるんだ、ということを語ったそう。

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講義を準備する学生側も、小学生にも分かる言葉で、と思うと中々難しくて…。
という葛藤を抱えながらの講義だったそうですが、その真摯に向き合う姿勢は子どもたちにも伝わっていただろうし、
彼らにとっても意義深い時間だったのではと思います。

それに、テーマの多様性もさることながら、
大学生や社会人が小中学生の前に立って、という座学は中々ないものですよね。
小中学生にとっても、貴重な体験となったことでしょう。

うん、①、④の押しポイントも納得〜。

 

いやぁ、濃い時間だった。

確かに、特に教育に関心のある大学生にとっては、子どもの成長を間近で見れたり、
関われたりすることにとても価値を感じるだろうし、追求し甲斐があって面白そうだと感じられる内容ですね。

さて、ではでは参加した子どもはどうだったんでしょうか。

 

当日、紅一点だった中学生のもねちゃんは、

「学校では意見を出せないけど、ここでは発言しやすいし、初めて勉強することもたくさんある。部活で最近副部長になったけど、そこでも色々言えるようになった。」

とのこと。

や、やらせか?!と思うぐらい、この夏の成長を話してくれました。

この夏のゼミで一番印象に残っている話を聞くと、

「講義の時間に自分の人生設計について考えたとき。自分の人生や目標とか、とりあえず色々書いてみて、
初めて自分の目標にしてることがわかった。近くの目標もこんなことなんだなぁとわかった!」

と言っていました。

 

うんうん、自分の将来や、やりたいことを、職業という選択肢以外で考えてみる、
というのは、学校でも中々ないよなぁと思います。
先生になる〜とか警察官になる〜とか、大抵肩書で考えてしまうもの。
そんな経験、中学時代に私もしてみたかったですね(・ω・)

 

こんな素敵なきっかけをつくっている、郷中ゼミ。
小・中学生の夏休みが終わった9月も、週末を利用して行われるとのこと。やったね!

小・中学生で参加してみたいという方はもちろん、学生スタッフとしての参加に興味のある方も、
ぜひ一度お問い合わせをしてみてはいかがでしょうか?


 

■お問い合わせ先■

郷中ゼミ代表 畠中聡志(はたなか さとし)さん

TEL:080-2799-4527
MAIL:gozyuuuzemi@yahoo.co.jp

鹿児島大学法文学部6年生。故郷は熊本県熊本市。 大学に通う歴が遂に、小学校時代と並びました。 カナダ、トロントでの留学をきっかけに「マイノリティの生きやすさ」について考え続けています。 十人十色の気づきが生まれる対話の場づくりが大好きで、 現在、ファシリテーション修行中です。