畠中聡志さん / 鹿児島大学

今年の夏から、小・中学生の新しい学び場「郷中ゼミ」企画を運営している大学生、
畠中聡志さんを取材してきました!

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(郷中ゼミの取材レポートはこちら。)

 

鹿児島大学工学部3年
畠中聡志さん

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◆まず、郷中ゼミでは実際、どういうことをやっているんですか?
主に3つのことをやっています。まず、45分を1コマとする自習の時間。このゼミの参加対象は小学校4年生から中学校3年生で、勉強するものは、夏休みの宿題、ドリルなど各自で持ってきてもらいます。大学生も時間を決めて一緒に自習をするんですよ。(笑)

その時間、小中学生はいつでも大学生に質問ができるよっていう仕組みです。残り最後の15分になったら、「郷中タイム」といって、友達同士で質問し合える、という時間も取っています。

2つ目は、ためになる面白講義というもので、今まで学校では教えてくれないこと教えてくれる講義を開講!という感じでやってます。どちらかというと生徒に質問をしながら、体感型というのを心がけて、楽しいようにやっています。今まで僕自身がやったのは、「何のために勉強するのか」っていうのと、「お金について」っていうものです。
あとは社会人の方に「自然の大切さ」というテーマで話していただきました。

いやぁ、これもなかなか難しくて。(笑)初めて講義をやりましたからね。

 

◆丸々50分ぐらいしゃべるんですよね?(笑)
そうです、そうです。(笑)

それで、最後の1つが詮議で、これは1グループ3~4人のグループに分かれ、大学生が1人ずつ入って話し合いをするものです。
これまでは講義のテーマと並行してやっていて。
例えば何のために勉強するのか、という講義の後に、みんなは何でだと思う?というテーマでやってみたり。
まず自分で、何のために勉強するのかを考える前に、どういう時に勉強したくない?というのを書き出してもらって発表してもらったり。

面白かったのは、自然の大切さについてやったときですね〜。
里山遊びについて話していただいたので、実際にこれやりたい!っていうのを計画立てたりする時間にしてみたり。

 

◆へ〜!楽しそうですね!
うん。でも、難しかったです。みんな「これやりたい!これやりたい!」ってなって。(笑)
グループで1つ決めてみようってことだったので、意見が全然噛み合わなくなったり。(笑)
でも、良い勉強になりました。まぁ、このようなことをやっております。

 

◆どんなメンバーで運営しているんですか?
僕が基本的にその場に居て、副代表という形で児玉ちひろさん(鹿児島大学4年)が一緒にやってくれていて。
彼女が詮議の時間を担当してくれています。それで毎回、大学生スタッフが2~3人程度、小中学生は6~8名程度に対してついているっていう感じです。

 

◆やっていて、難しいなぁと感じることはどんなところですか?
うーん、一番難しいのは、やっぱり、、、ダメって言わないといけないときもあるな、っていう。(笑)
できるだけ本当に子どもの好奇心とかに応えたいし、楽しくやっていきたいけど。

例えば、こんなことがありました。
たぶん親に自由研究の本を探してきなさい、とか言われたんでしょうね、とある日、生徒が「図書館に行きたい!」と言い出したんですよ。僕は大学の図書館に自由研究の本はないだろうなぁと思いつつ。でもその日は勉強するものを持ってきていなかったみたいなので、4人ぐらい図書館に連れて行ったんですよ。まぁそしたらそこで、本を検索してる最中に1人はいなくなるわで(笑)大変だったけど、一応何かしらの本を皆見つけて、その日は教室に戻ったんです。
次の日。図書館に行った時に、何か面白そうな図鑑とかを見つけてたらしくて。子どもってそういう図鑑とか難しそうな本にワクワクするじゃないですか。だから図書館にもう一回行きたいと。で、そこは僕も、「せっかく興味持ったんなら行ったほうが面白いかなぁ。」と思って、希望者の4人をまた連れて行ったんです。
そしたら、更に次の日、行きたい生徒が8人になったんですよ。(笑)
それで、これは人数的にもつれていくのに無理があるなと思って。
行かせてあげたいとは思ったけど、とりあえず一人ひとりに「何で図書館に行きたいの?」って聞いてみたら、遊びで行こうとしているなということが分かって。だからもうみんなに、「ごめんだけど、図書館に行くのも理由があって行くならいいけど、遊び感覚になってる感じがするんだよね。今日は勉強道具も持ってきてるし、集中してやってこう。」ってことで。
「はい戻って〜!」と。(笑)


◆隙あらば遊びたい、っていうのが子どもなんですかね〜。(笑)

いやぁ、難しいところはそこっすねぇ。やっぱやりたいことを全部叶えてあげたいけど…。
うーん。先生は大変なんだなぁって。僕は先生にはなれないなぁって。(笑)

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◆ではでは逆に、楽しい!って時はどんな時ですか?
やっている時間、もう全部楽しいですよ!(笑)

◆なるほど(笑)じゃぁ、質問を変えて…、郷中ゼミを始めて良かった!と思えることは?
やっぱり帰り際に、「楽しかった〜!また明日も来るね!」と言ってくれた時とかですかね。
あと、とある知的障害を持ったお子さんがいて。それで、このゼミって結構コミュニケーションを取る場が多いんですよね。
そこで、その子の親御さんは、自分の子がそんな活動は出来ないんじゃないか、と思っていらっしゃったらしいのですが、その子自身はいつも楽しそうに行きたいって言ってくれてたりしたみたいで。
それで、「こういうことが自分の子にもできたんだって驚いてます。またやる時はよんでください!」って最終日に言ってくださって。その時は嬉しかったですね〜。

◆良いですね〜。結果的に保護者の方からもそんな反応が生まれたようですが、そもそも何でこの「郷中ゼミ」をやり始めたんでしょうか?
そうですね、やり始めた一番のきっかけは、大学生だからこそできることを、できるうちにやりたかったってところですかね。
それは2年生になった時からずっと思ってたことで。
その中で、自分の好きなことと出来ることを考えた結果かなぁ。それと、あと、僕はパソコン系の学科なんですけど、それも技術者たちとそれを求めている人たちのつながりがあって。インターンという経験も通して、何を求めるかとか、色々考えると、やっぱり人とのつながりなんだなぁと思って。っていうところですね。
あと、僕自身、やりたいことを探そうとか真剣になれたのが大学生になってからだったんですよね。色んな人との出会いがあって。小中学生の時に、そういう出会い、その機会に接することができたら大きいかなぁと思って。


◆それは小中学生のうちに、将来の事とか考える機会があったら、っていうことですか?

うーん、将来のことっていうか、小中学生のうちって、与えられるものをただこなす感じだと思ってて。自分はこうしようとか、自分がやりたいこと探そうとか、僕自身そういう考え自体がなかったなと思うんですよね。何でも自分で決めなきゃいけないという意識がなくて。そういう意識を得る場もなかったし…、このゼミに参加してすぐ変わる、というのは無理だけど、ちょっと自分から積極的に何かやっていこうとか、自分が好きなことだから、他の子とは違って良いんだってことに気づけるきっかけを与えられたらなぁって。

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◆なるほど〜。
あ、あと僕、歴史が大好きで。(笑)

◆日本の歴史?
そう。特に明治維新とかそこらへん。戦国から明治維新が好きですね。それで、鹿児島にはもともと郷中教育と言うものがあって。それは教師なき教育とも言われていて、上が下を教えて、教えつつ学び、学びつつ教えるっていうシステムです。
その中で西郷隆盛が大久保利通を育て、大久保利通が東郷平八郎とか育てて…っていう独自の教育の場があったんですよ。
それで、これこそ大学生ができることなんじゃないかと。そういう場があったら、塾には行けないような子も勉強する機会が増えるし。このゼミを始めたきっかけはそんな感じですね。


◆塾というワードが出てきましたが、塾との大きな違いは何でしょうか?

やっぱり、まずは詮議と講義ですね。あと、「勉強しろ」とは絶対言わないですね。


◆勉強する場なのに、「勉強しろ」と言わないのは何でですか?

一番やってほしいことは、自分で考えて、自分自身で生きる力をつけて欲しいみたいなところがあって。


◆じゃぁそういう場は開いて機会は設けるけど、そこで「やれ!」とは言わないってことですね。

そうですね。やらない子がいたり、集中力がない子がいたときは、直接話をしますね。今どこらへんやってるの〜?とか、普通に話しかけます。分からなさそうだったら対応する、っていう感じですね。

 

◆なるほど。スタンスにもこだわりがありそうですが、どんなことを考えながらやっているのですか?
これをやるときに、めっちゃ心がけているのは、子どもたちが自分の意見を言いやすい環境をつくるってことなんです。詮議をやるにも講義をやるにも子どもたちの意見を聞いたりするので、子どもたち同士もだし、子どもたちが大学生に話しかけやすい環境を作ったりしてます。そのために、*マチトビラの研修で学んだことをかなり真似させてもらってます。(笑)
*ファーストペンギンとか、前のめりの姿勢で、とか、*反応2倍を*グランドルールにしたり。(笑)
*マチトビラの研修:畠中さんが、株式会社マチトビラがコーディネートするインターンシップに参加し、そこで受けた研修のこと。

*ファーストペンギン:群れの中で最初に飛び込むペンギンを指す。誰かが勇気を持って最初の一歩目を踏み出してみよう、という例え。

*反応2倍:話し手が気持ちよく話すためにも、相手からより多くのことを聞き出すためにも、普段の2倍のつもりで、あいづちを打ったりしようということ。

*グランドルール:その場において、全員で大事にしたいと思うことを集めたルール。

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(インターンの研修で使用したものを参考に、畠中さんが描いたルール。)

◆ご自分の体験を最大限に活かされてますね。時間的にも、労力的にもかなり割いてるんじゃないかと思うんですが、これだけのことを「よし、じゃぁ実行しよう!」となった最後のひと押しは何かあったんですか?
やっぱりそれは、*櫻木さんとの出会いが大きかったですね〜。だって、南九州デジタルでインターンしていなかったらやってなかったですね。2年生の始めの時は、実は大学周りのグルメマップをつくろうって動き出したんですけど、結局企画倒れになってしまって。まぁこれで、本当にやりたいことじゃないと続かないなぁという気づきもあったんですけど(笑)

やっぱり、その時と違うのは櫻木さんとの出会い。櫻木さんから学んだ一番大きなことは「覚悟」ですね。やるって決めたからにはやる。熱かったなぁ、あの人は。

*櫻木さん:株式会社南九州デジタルの社長、櫻木伸一社長。畠中さんは、同社で約1ヶ月半のインターンシップに参加し、社長の右腕として広報・マーケティング業務を経験した。

◆それは、社長が直々に教えてくれたことなんですか?
いやぁ、背中を見て学んだって感じです。(笑)やるときはやるんだなぁみたいな。動きながら考えないといけないなぁと。考えるだけじゃダメだなぁって。今回はやってやるぞ、という感じで。(笑)
まぁ自分がやりたいことへの第一ステップかなぁと思ってます。

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◆素晴らしいですね。やりたいことの第一ステップっていうことですが、今後、畠中さんがやりたいことって、どんなことですか?
僕自身、最終的な目標から言うと、日本を夢と野望があふれる社会にしたい!と思ってます(笑)そこに向かっていきたいですね〜。

あと、郷中ゼミを始めたきっかけにもつながるんですけど、例えば就活とか、皆ではないけど、一部の人は、今まで遊んでいたけど突然何も考えず公務員講座に行き始めたり。あと、ただ就職できたら良いやっていう風潮があって、これで楽しいのかなぁ?って思ってて。こんな風になっているのも、大学生になるまでに社会人と関わる場がなかったり、そういうことを考える機会もなかったからなのかなぁと思ってます。それで、そういう考え方を根本的に変えるのはやっぱり小中学生時代の教育だなぁというのがすごくあって。

今の学校教育は、もう学校の先生だけでは絶対に無理なので、そこに社会や大人たちが関わって、本当の意味で…うーん。子どもたちが自分のやりたいことをやれる、じゃないけど。クラス皆が浮いているような学級になったら良いなぁと。学校の先生は大変だと思うけど(笑)学校の先生の役割としては、その子1人1人に寄り添って、皆が楽しいと思って学校に来てくれるってだけでも良いと思ってて。授業は分かりやすくね。ただ、わかりやすい授業とかはメインじゃなくていいと思うんですよ(笑)それで、そういう勉強の部分は学校や郷中ゼミが担うような形で、それに加えて、例えば土日などに、電気工作が得意な社会人が工作好きな子を集めてワークショップをやったりとか、本が好きな人は作家さんのボランティアによる教室を開いたりとか、社会全体として、子ども全体に関わってくれるような教育のあり方が理想的だと思いますね〜。そういう動きの後押しができるような会社をつくれたらいいなぁ、後々は。

◆わ〜良いですね〜!聞いていてとてもワクワクしてきました!
そんな関わり方ができるだけでも良いなぁ思ってます。うん、頑張ります!(笑)


◆応援しています!今日は本当にありがとうございました。
では最後に、読者の方へのメッセージをお願いします!

こんな風にインタビューされるのは滅多にないことなのでいい経験でした。
メッセージ…うーん。僕ごときが言えることは少ないんですが、色んなことをする上で僕が大事にしている言葉をあげたいと思います。

それは、「何事もやらなきゃ0、走りながら考えろ」です。
どれだけいいアイディアを思いついたとしてもそれを行動に移さなければ何も生まれません。私もそれやろうと思ってた、ではだめなのです。そのために大事なのが「走りながら考えろ」です。
これはまさしくそのままで、考えることと行動を同時にしていこうということです。郷中ゼミは計画を練って、色んな人に事業計画書をみていただいてから実行していきました。しかし、それでも失敗は多かったです。でもその都度なんとか改善策を見つけて諦めずにやることができました。やりながら試行錯誤して学んだことこそ本当に自分のためになると思います。

…とまあこんなところで終わりにして、最後まで読んでくれた皆さん、本当にありがとうございます。僕は今回の経験を通して、自分は一人じゃないし、頑張れば応援してくれる人が必ず現れるということを経験することができました。この経験は何にもかえられない財産になります。

残りの大学生活も後少し、悔いのないよう全力で楽しんでいこうと思いますので、なにかやれることがありましたらぜひ一緒にやりましょう!!

ありがとうございました。

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◆インタビューを終えて
以前から知り合いの畠中さんでしたが、改めて彼にインタビューできて良かったです。インタビュー中も、いつものように人懐っこい笑みを浮かべ、1つの質問に対して溢れる思いをたくさん語ってくれました。郷中ゼミを通して試行錯誤を繰り返し、正に挑戦のまっただ中にいる人だなぁと感じています。社会全体が子どもに関わるような社会にしていきたいからこんなことをやりたい、そんな彼のビジョンにたくさんの刺激をもらいました。
これからも挑戦を重ねるであろう彼の活躍を追い続けたいと思います!

ありがとうございました!

(インタビュー・文/濵津綾乃  写真/濵津綾乃)

 

鹿児島大学法文学部6年生。故郷は熊本県熊本市。 大学に通う歴が遂に、小学校時代と並びました。 カナダ、トロントでの留学をきっかけに「マイノリティの生きやすさ」について考え続けています。 十人十色の気づきが生まれる対話の場づくりが大好きで、 現在、ファシリテーション修行中です。