岩本諭さん/斜面地・空き家活用団体「つくる」

表紙

Vol3
岩本諭 / 長崎大学大学院水産・環境総合研究科


以前に前田晴郎さんを紹介した際に触れた“斜面地・空き家活用団体つくる”で活動している諭さん。大学の研究室での斜面地活用の研究を経てまちづくり活動されていますが、その背景には様々な想いや活動がありました。日本が今直面している空き家問題やstudio-Lのインターンにも取り組む諭さんの、現在の活動の様子とこれまでの経緯についてインタビューしてきました。


◆はじめに今一番注力している活動について教えてください!

今一番力を入れているのは”つくる“での活動です。
以前にも記事にしていただきましたけど、つくるとは

斜面地の空き家活用の模索

実際に南山手に住み、オープンスペースにして、斜面地に来る機会を創出

これからの「暮らし方」の提案

を目的に活動しています。

つくる邸夕焼け

つくる邸から見える夕日と長崎港

 

これまでの活動としては、まず2014年の6月から現在の“つくる邸”に住み始めました。
物置状態の古民家だったので、まずは1ヶ月間ほど部屋をキレイにしましたね。
7月くらいにやっと活動できようになって、周知していただけるように動き出しました。

つくる邸のお披露目会を、地元の“みなとまつり”と合わせて開いて、仲の良い大学生10数人を招待しました。

お披露目会1

”つくる邸”お披露目会の参加者

お披露目会2

縁側から見える花火

人が集まるだけでは面白みに欠けるので、斜面地の良さを少しでも知ってもらうために、縁側からまったり花火を見てもらえればと思いましたし、“つくる邸”をお披露目できたらなと思って開催しました。

人でごった返しているお祭り会場とは違った空間が作れたかなと思っています。
日本家屋×花火×風鈴×縁側!みたいな(笑)

あと、大家さんや仲介してくださった不動産、お世話になった自治会長さんを呼んで「こういった場がつくれました」と報告しました。

◆ほかにどのようなことをこの場でしているのですか?

ほかには、ちょくちょく人に来てもらっています。
環境系の団体やNPOの友達、、、
仲のいい友達が来た時には夜通しゲームの話をしていたりしました(笑)

とある平和団体が、8/9に行われる長崎の平和記念式典に参加する際に
「普通のホテルでなくて、長崎の頑張っている人と会える場所に泊まりたい」
ということで、つくる邸に3泊4日していただきました。

◆宿泊場所としても提供しているんですね。ではほかに取り組んでいることは?

ほかには、まちづくりを手がけている森恭平さんという方が座長を務めている
U-30からはじめる長崎のまちづくり会議”という場で、つくるの代表として参加して、事務局長を務めさせていただいています。
まだ、就任して2週間なんですけどね(笑)

30歳以下の長崎のまちづくりのために活動している人たちがコアメンバーになって、年に2回夏と冬に“これからの長崎のまちづくりの会議”をする場所の提供をしています。
これまでに2回開催していて、8月に「あったらいいな、こんな浜んまち」と題して長崎市の浜の町でイベントを開催しました。

U-30チラシ

”U-30”イベントのチラシ

U-30様子1

”U-30”イベントの様子

イベント様子2

”U-30”イベント参加者

会議の場で出た参加者それぞれの「こんな町にしたい」をその場で発表してもらって、コアメンバーが収集・分析して、長崎市に提出してきました。
この取り組みは市の認定事業になっていて、会議の結果を市長に報告する場も設けていただきました。

市長訪問

”U-30”市長へイベントの報告

第二回 U-30からはじめる長崎のまちづくり会議 (short ver.)

(youtube)

まちづくりの先輩がたくさんいて、つくるへのアドバイスもたくさんいただいています。
大学院生をはじめ、公務員の方もいれば市議会議員を目指している方もいます。
デスクワークやデザインなど、それぞれが得意分野を持っていて、お互いに補い合いながら取り組んでいるのでとても刺激をいただいています!
皆さんにもぜひ知ってもらいたい取り組みです!

個人的には、studio-Lのインターンシップも受けています。
今長崎の“あぐりの丘”という牧場がstudio-Lにコンサルティングを受けているんですが、その情報を事前に聞きつけて「お手伝いをさせてください!」と本社にメールで問い合わせたところ、会って話すことになりました。(笑)

有志が毎月1・2回ほど集まってミーティングを行い、計3年間コンサルティングを行うのだけど、僕は1年目は会場のセッティングや資料配布、写真撮影ばかりでほとんどお手伝い状態でした(笑)
でも2年目からは「デザインにも興味あります!」とアピールしたら、studio-Lから参加者へ配布している議事録のデザインを担当させてもらえるようになりました。メールで何度も指摘を受けながら、次のミーティングまでに議事録を作っています。

◆では、“つくる”はこれからはどういった取り組みを行っていく予定ですか。

これからは、

①   もっと家のクオリティを上げて、たくさんの人が素泊まりできる環境にして、たくさんの人が斜面地を実際に体験できる環境をつくる。

②   イベントをする。
それも、「こんなことをやりたいです」と企画を持ち込んでもらってもいいですし、つくるとして主催してもいいですし、、、
若者が斜面地を体験するきっかけになればいいなと思っています。それで、実際に歩いてみて「いいなあ」と思って欲しい。

③   もう何件か空家を管理して、ほかの人にも実際に住んでもらいたい。
というのも、まわりに住んでみたいといってくれる面白い人達がいて、つくるが管理してそんな人たちとマッチング。

ができていけたらいいなと思っています。

◆では、なぜ岩本さんはこのような取り組みをしていこうと思ったのですか。

僕自身学部・院の研究テーマが斜面地であり、南山手が研究地だったというところが大きいです。
斜面地の魅力を知り、斜面地の維持を目的に研究していました。
2年半ほど研究して自治会長さんらにインタビューしたところ、「空家が増えている」「若者が減ってきている」「地域が寂しくなっている」とうことがわかりました。
若い自分たちからすれば、「坂や居留地を感じられる、景色の素晴らしい場所だ!」と思っていただけに、ショックを受けました。
そして斜面地にどんなことができるだろうと考えて、若い人がもっと住めばいいのではと思い、空家を見つけて「自分たちで住んじゃえばいいか!」と思って今のつくる邸に住んでいます。(笑)

若者が来てくれるきっかけを作って、実際に住んで人が増えればいいなと考えていますけど、若者だけで盛り上がっても意味がなくって、地域の人とも仲良くなってうまく巻き込んでいきたいです。
まだ、若者だけで盛り上がっている段階かな、、、

tukuru

つくる邸外観

 

◆活発に活動されていますが、そのきっかけとなったことはありますか。

話は高校生の頃まで遡りますが、僕はすごく田舎の自然の綺麗なところに住んでいて、漠然と「この自然が壊されるのが嫌だなー」と思っていました。
あと、ミスチルのことが好きで、その好きなミスチルが“APバンク”という、環境にいいことをしている団体にしか融資をしていない銀行を作ってりしていて、それらに影響されて環境問題に興味を持つようになりました。

高校生の頃はずっと野球をやっていたんですけど、引退後に先生の勧めで生物部に入ってオオサンショウウオの研究をしました。
その研究テーマで長崎大学の環境科学部へAO入試で入ることができました。
先生は「こいつは勉強ができない!」と見抜いていたんだと思います(笑)

大学1・2年生の大半はちゃらんぽらんに過ごしていましたけど、
2年の3月11日に震災が起きて、その1週間後にドイツへ10日間ほどエコツアーへ参加して環境学習を行ってきました。

“震災”と“エコツアー”が今の活動の、すごく大きなきっかけになったと思います。

ドイツ

ドイツでの一枚

まずエコツアーでは、環境問題への取り組みの考え方が大きく変わりました。
ドイツのフライブルクという、まちづくりでCO2の大幅削減に成功した街に行きました。
これまで僕は環境問題に対して「エコロジー」や「リサイクル」といった考え方しかできませんでしたが、その都市では自転車利用や太陽光パネルの推奨、生ゴミを再利用したメタンガスの生成などを行っていて、まちづくりから環境問題へアプローチできるということを学びました。

そして日本へ帰ってみると、東日本大震災が起きていて、自分も何かをしたいという衝動に駆られました。
翌年に僕も被災地へ行ってボランティアへ参加する機会がありました。
仮設住宅では赤の他人同士がまとまって生活をしているため、人間関係がとても窮屈で緊迫状態にありました。
そこでコミュニティ形成の大切さを考えさせられ、人と人のつながり作りをしたいという決意への追い風になりました。
その後は”長崎Sip-S”という学生団体で被災地支援をしつつ、原発や核兵器のことを学んで、斜面地研究を含めたくさんのことをインプットしていきました。

そしてようやく、アウトプットの場として“つくる”で活動できるようになりました。

・高校時代=環境問題への取り組みのきっかけ

・ドイツエコツアー=環境問題というテーマからまちづくりに気づかされる

東日本大震災=コミュニティづくり、人と人のつながりの大切さの痛感

  ・斜面地研究=長崎の斜面地問題への気づき

◆最後に読者へ伝えたいことはありますか。

ぜひ、つくる邸に来てください!
つくる邸とは、長崎市の南山手という場所にあって、築70年で縁側もあって、5部屋のうち2部屋をオープンスペースとして会議やイベント・素泊まりの場所として提供しています。
長崎港から海を見ることもできますし、WI-FI、プリンターも完備しています!
長崎のかつての居留地を見ることもできて、坂のまちナガサキを体験することもできます!

長崎に来る機会があれば是非お立ち寄りください!

◆ありがとうございました!

つくる2

◆編集後記


高校生の頃からの考え続けた環境問題への問題意識から、さまざな人生の転換期を経て今の取り組みにたどり着いていて、とても感心させられました。
岩本さんの行動力もとてもすごいですが、活動のなかでお話に出てくる周りの人に支えられて今の活動が出来ているのだなと感じました。
前田さんのインタビューから、これからの活動の方針も定まってきているようでしたが、まだまだ不安なところもあるようなのでたくさんの人に温かく見守っていただきたいと思います。
岩本さん、本当にありがとうございました!


 

(インタビュー・文 中元喬介)

非営利団体つくる
https://www.facebook.com/tsukulu.nagasaki?fref=ts

U-30からはじめる長崎のまちづくり会議
https://www.facebook.com/nagasaki.u30?fref=ts

RON blog
http://iwamotoron.com

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nagasaki-3

長崎大学経済学部4年。宮城県石巻市へのボランティア参加をきっかけに、面白そうなことへほいほい首を突っ込むように。イベント参加経験を活かして講演会の運営など手がけたことも。これからも、首、突っ込んでいきます。