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Vol.2
松永千紗さん/鹿児島大学 4年
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鹿児島でフェアトレードグループBOROOの代表を務める松永さん。積極的に海外に飛び出し、自分の目で見て、感じて、現地の人たちと話して、それを伝える活動を積極的に展開。BOROOでの活動や、大学での自身の調査研究で大切にしていることは、「現地に赴くこと」。国内外を、フットワーク軽く飛び回る松永さんをご紹介します。
◆はじめに今一番注力している活動について教えてください。
なんか、あんまりこれ一個って絞っていないので、なんだろう…。春休みに帰省してやってきたのは、地元(佐賀県武雄市)の姉妹都市である、セバストポールとの交流プログラムの引率。あとは、大学での調査研究では、自分の興味ある、ちょっと面白そうだなと思ったものを片っ端から読んだりとか見たりとか行ったりとか。それと、BOROOでの活動ですね。
◆1つずつ詳しく聴いていってもいいですか?
どうぞどうぞ。
◆地元(佐賀県武雄市)の姉妹都市であるセバストポールとの交流が、鹿児島に来てからも続いているのはどういう経緯ですか?
一応地元を出てはいるけど、去年までは、実家でホームステイの受け入れもしていましたし、一昨年には、セバストポールとの交流プログラムの関連として、フェアトレードグループBOROOをアメリカで迎えてくださったりして。楽しいからやっているっていうのが大きいけど、いつもお世話になっているから、ちょっと手伝いたいという感じですね。
◆フェアトレードグループBOROOとして、セバストポールに行った理由は?
2年前の夏に、BOROOのみんなでセバストポールに行ったんだけど、その年の春に、セバストポールで私たちを受け入れてくださった日本人の方が、うち(松永さんの実家)にホームステイに来ていて、すごくお世話になって。その時に、私が今、フェアトレードの活動をしていますって言ったら、セバストポールでもフェアトレードの活動をしているよと仰っていて。それ以外にも持続可能な開発についても興味があるっていうことを言ってたら、それを含めた研修プランをつくってくれて。それで、「BOROOで行っていいですか?」って言ったら、「いいよ!」と言ってくださったので行くことになりました。
◆現地では、どのような活動をしていたんですか?
私たちが行くってなったら、現地で「じゃあ、うちにもおいで」「うちにも!」って言う風に手を挙げてくださったところがいくつかあって、そこを中心に見学を2週間しました。その2週間では、私以外の他のメンバーにもホームステイの楽しさとか、海外で本当の家族みたいに接する人ができる嬉しさとか、楽しさを体験してほしいなって思ったので、ホームステイもしつつ過ごしました。その他にも、大学の前でフェアトレードのお店をやっている人と、サンフランシスコでたまたま知り合ったので、どういう経緯でフェアトレードのお店が運営されているのかを学びました。生産者と消費者の真ん中にいる人たちの活動を見ることがアメリカでの大きな目的で、それにプラスして、持続可能な開発やセバストポールのことについてなど、学んでおりました。
◆では、もともとセバストポールとの関わりは、地元が姉妹都市だったからという理由で、そこから、松永さんがフェアトレードに興味関心があるっていうことを伝えたことで新たな繋がりが生まれたということですか?
そうですね。
◆へー!フェアトレードの話が出たので、フェアトレードグループBOROOについて聞かせてください。まず、BOROOはどういう団体ですか?
BOROOの始まりは、大学1年生の前期に「共生のためのフェアトレード」という授業を受けて、そのあとの短期集中講義で、夏休みに中国の内モンゴル自治区に研修に参加したことが中心になっています。私たちが内モンゴルで観たのは、生産者の人たちの動きです。一番最初の、モノがつくられるところを観ました。内モンゴルでは塩っていう商品だったけど、塩という商品がフェアトレードやソーシャルトレードの流れの中で、どうやって動いていくのかを観ました。内モンゴルっていうのは、過放牧や人口が多すぎること、環境破壊が原因で砂漠化が進んでいます。それを食い止めるために、フェアトレードの塩を販売したお金を使って、緑化活動をしたりすることで、地元の人たちの暮らしを豊かにするということを目的にしている事業を生で観ました。そういうのを観て、内モンゴルの人たちと、この事業にどういう問題点があるとか、私たちはこういう風に思ったとか、議論もして日本に戻ってきました。しばらくブランクがあって、その間に、「内モンゴルでいろいろ見たけど、それをどうしたいのかな?」と考えてはいました。でも、考えているだけでは忘れそうだし、なんかもったいないなと思って。それに、内モンゴルでお世話になった人たちへの手助けもちょっとやりたかったから、内モンゴルに行ったメンバーを中心に集まって、団体をつくりました。最初は違う組織に入ってノウハウを学んで、最終的に学生の団体としてBOROOを独立させて、まあ、いろいろやりながら今に至るっていう感じです。
◆BOROOでは具体的にどんなフェアトレード商品を扱っているんですか?
主に扱っているのは、最初に行った内モンゴルの塩やその関連商品。イベントで販売もするけど、学内で販売したり、イベントもしたり。塩を売っている会社が、内モンゴルの緑化活動もしているので、緑化活動基金に入れています。必要経費以外は送っています。でも、フェアトレードグループだけど、フェアトレード以外のこともやっています。
◆フェアトレード以外のこととは?
フェアトレードを考えるときに、なんでそれが必要な状況になったのかとか、今ある制度に満足するんじゃなくて、もっと良いやり方は無いかと考えられるように勉強会を開いたりしています。全面的に「フェアトレードいい!」って言うんじゃなくて、こういう問題点もあって、さらにこういう問題点もあって、ここも改善したほうがいいけど、こういう良いところもあるっていう風捉えたいので、勉強をすることを大切にしています。
◆「フェアトレード以外」っていうのは、物を販売する以外のこともしているということなんですね。
そうですね。フェアトレードにもいろんな団体があって、それぞれの団体のカラーがあります。BOROOのカラーは、私たちを最初に内モンゴルに連れて行ってくれた先生が言っていた、「物事を批判的に見て、もっと先に進む」っていうのを忘れないこと。その為に、勉強会を結構頻繁にやっています。人のためのグループっていうよりは、自分たちの為のグループっていう気持ちも半分ずつくらいありますね。
◆自分たちの為っていうのは、批判的な見方を身に付けることで将来に役立てられるということ?
なんか、結果的にっていうのもあるけど、今、3年間活動してみて、フェアトレードについての視点や、そこから派生した世界についての視点に関連して、今は将来に繋がっている人がBOROOのメンバーの中には多いみたい。今、それぞれが自分なりのやり方でやりたいことを見つけている。最初はみんなで一緒にやっていたけど、BOROOの活動の中でいろいろと見つけて、それぞれやりたいことも違うことが分かって、BOROOでの活動を踏み台にして、自分のやりたいことをするっていうことで留学に行ったり、それぞれ決めて動いている。
◆松永さんの中で、BOROOの活動が自分の為になったなって感じる具体的なエピソードはある?
一人で何かをしたり、学ぶわけじゃないから、自分とは違う意見の人とか、いろんな視点や考え方を取り入れることが出来たと思う。昔はこういう風に考えなかっただろうなと思うようなこともある。あんまり具体的じゃないんだけど(笑)ぼんやりと、そんな感じです。
◆ほー。松永さんはいろんな国に行かれていますが、ずばり、海外は好きですか?
好き好き(笑)でも、日本も好き!海外に行くのが好きな一番の理由は、見たことないものが見れることですね。匂いもすごい独特なものがあるし、「うわー、これ、バングラデシュの香辛料の匂いだ!」とか。(笑)それに、五感だけじゃなくて雰囲気から感じられるものも多い。あと、ご飯はもちろんすごく大事だし。(笑)
◆すごく好奇心旺盛ですよね。
そうそう。それだけで生きています。(笑)
◆でも、繋がっている気がします。フェアトレードの活動を続けていくにしても、国同士についての興味や好奇心が強いのかなと思うのですが…
そうですね。なんか、うん。大げさに言うと、世界平和とか国同士の関わりを考えた時に、経済って欠かせないもの。私たちは先進国に生まれて、すごく恵まれている立場にいるからっていうのもあるけど。フェアトレードについて全面的に良いと思っているわけではないし、改善点も浮かぶけど、フェアトレードが経済を補完する術であってほしい、というのが私の希望。経済の影の部分を補うことも出来るのかなと思っています。良心を基盤に置いているのがいいなと。普通に好きだっていうのもあるんだけどね。
◆現地に行って直の動きを見て、活動をする原動力は何ですか?
私は、知りたい欲。BOROOを立ち上げた時に、どんな団体にしたいかをみんなで考えたんだけど、私たちが一番売りにできるのは、現地を観たことだよねってなった。モノを売るときにも、私たちが現地に行った写真を出している。消費者に、その商品自体を私たちを通してもっと身近に感じてほしい。なにも想像しないで買うんじゃなくて、身近に感じてほしい。「私たちが行って、実際に触って、お話も聴いてきたんですよ!」と、現地での体験を話すようにしている。それと、中間業者の人たちに商品を委託されるときにも、その人たちに必ず会うようにしている。それも、できるだけ現地に行っている人と会う。ちゃんと話してから取り扱う。お客さんに短い距離の情報を伝えたい。あとは、行かないとわからないことがたくさんあるから。自分たちで何かを考えるには行かないとわからない。五感で感じることプラスアルファ。そういうのを私たちは知りたいし、この国ではこういう風に苦しんでいる人がいますって言うのを、実際に行った人が言うのと、インターネットで見た情報を口ばっかりで言うのとではだいぶ違うと思うし、重さも厚さも違うから。私たちとしては厚みのある語りができるような体験が欲しい。
◆現地に行って観ないとわからないっていうことが、今注力していることにも挙げていた、大学でしている研究にも繋がっていますか?
ありますね。私の、フィールドワーク好き、現地好き、な精神は、BOROOの活動を踏み台にして出て来たものだと思う。
◆大学では、どのような研究をしてらっしゃるんですか?
移民に関してと、コミュニティ研究です。テーマとしては、すでにあるコミュニティに外から入ってくる人たちが上手く地域に溶け込める、生活していくために何が実用的かっていうのを考えたい。今、ボーダーレス化が進んでいますが、必ず摩擦は起きると思う。その摩擦を小さくするために、成功している事例を集めたいと思っています。
◆大学での研究にもBOROOでの活動にも熱く取り組んでいる松永さんの今後の目標を教えてもらえませんか?
最近よく聴かれます(笑)目標は、正直、今目の前にあることをやること。これだけいろいろ言ってるけど、あんまり活動が伴っていないと思う。だから今はとりあえず目の前にある研究を一生懸命やって頑張りたいな。今は、それの為だけに時間を費やしたい。
◆時間など、今欲しいものが全部伴っていたとして、こんな人と一緒に活動したいと思う人はどんな人ですか?
なんか話せることがある人ならいいと思います。何でもいいと思う。話せて聞ければ。熱をもって話せる何かがあって、人が話したことを取り入れられる人。自分が言ったことを人にも取り込んでもらえる人。そういうのがあったらいいねって思うし、そういう団体があったら面白いよねって思う。
◆最後に読者の皆さんへメッセージをお願いします。
自分がどこかに行った話をするのって、結構楽しいよっていうのは言いたい。知ったかぶりしないで話せること、心から話せることがあるのは、いろいろ繋がりも生まれるし、いい刺激にもなるし、人がそういう風に話しているのを聞けるのも楽しいし。みんなもっと外に出てほしい。心を柔軟にして外に出てほしいですね。最初に言ったように「発展途上国だから」という視点ではなくて、その国はその国として認めて、行ってほしいなと思います。就活の為に海外に行ったりする人もいるけど、何かの為ではなくて、楽しいから行こうよ!と思います。一回外に出た人は絶対に言うけど、外に出てからいろんなものを見ると、また全然違いますよ。
◆編集後記
松永さんが、自身のこれまでの活動について話してくださった時に、「全然足りない。もっとできることがあるはず!」と力強く語っていたのが特に印象に残っています。自分の興味関心に正直に向き合い、ありのままに動いている姿に“熱”を感じました。とっても熱くて面白い松永さんのお話を聴いて、どこか遠くに旅に出たくなりました。フラッと、でも、何かを掴む旅をしたいです。
松永さん、熱い時間をありがとうございました!
(インタビュー・文 吉野さくら)
フェアトレードグループ BOROO
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