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Vol. 1
前田晴郎/長崎大学工学部4年
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放置自転車の回収・修理・活用を行う「ちゃりさいくる」での活動を始めとして社会人や行政との関わりを持ちつつ、高校生などへの教育の場や環境系のイベント等へ積極的に参加・活動されてきた前田晴郎さんの、今後行っていきたいという新しい取り組みについてインタビューしてきました。
◆はじめに今一番注力している活動について教えてください!
長崎市の地域特性であり、地域課題となりつつある斜面地にある空家を学生を中心とした若年層が活用することで、地域コミュニティーの活性化をはかることを目的とした非営利団体「つくる」での活動を行っています。
◆なぜその活動をしているのですか?
長崎という土地は70%が斜面市街地と呼ばれる地域特性をもち、かつては多くの人が斜面地に住んでいました。しかし、斜面地利用から50年ほど経って、そこに住んでいる人が高齢化し、だんだん山の下の地域で暮らすようになってきました。このことにより斜面地では空家が増加傾向にあり、また階段や細道が多いため、撤去費用や新しく家を建てることにもすごく費用がかかってしまうという問題が起きてしまいます。空家を放置しておくと家の駆逐や治安の悪化など様々な問題に発展しかねません。そこで、元気のある学生や20代から30代の若年層がその空家を活用して自治会の活動を盛り上げ、地域コミュニティーの活性化・地域教育の実践を行っていけるのではないかと思い「つくる」を立ち上げました。まだ活動を始めたばかりで、グラバー園の近くの南山手地区を中心に活動の拠点としています。
◆なぜ南山手地区で活動しようと思ったのですか?
長崎市の南山手地区は旧居留地と呼ばれ歴史的に様々な人や文化を受け入れてきた長崎特有の地域であり、出島象徴するように江戸時代からの近代文化の発祥の地でもあります。このような歴史的背景があるため、私たちのような新しい取り組みも受け入れてもらえるのではないかと思い、また「南山手を盛り上げたいな。」という思いから活動の拠点として選びました。
◆設立はいつされたのですか?
設立は、昨年(2013年)の11月にしました。
◆ということは、まだ設立から4ヶ月ほどなのですね
そうですね。実質活動できたのは3ヶ月ほどです。僕個人は、卒論などに追われていたので2ヶ月ほどしかしていないけど(笑)
◆ではなぜ、個人ではなく法人化されたのですか?
最初は一人でやろうと思ってたんだけど、環境科学部の修士の友達が南山手地区の景観を研究していて、「南山手で何かしたいんだよね」という話しを持ちかけられ、Facebookでもこんなことがしたいと発信したら、「興味あります!」と声がかかり、じゃあみんなでやっちゃおうと(笑)
◆勝手に集まってきちゃったんですね。
そう。勝手に集まったから、別に集めたわけじゃない。逆に言えば、個人では「空家を使ってなにかをしよう」ということしか決めていないから、みんなそれぞれしたいことをしてもいいんじゃないかなと思っていて、何かを規制するつもりもないですね。今も一人はフランス留学に行っていて、一人はタイとカンボジアに行って帰ってきたばかり(笑)
◆では、南山手を選んだのも紹介があったからなんですね。
そうですね。研究してる友人が「ここ、いいっすよ!」って言ってきて、自分的には空家ならどこでもいいと思っていたから。
◆なるほど。ではなぜ空家の問題に取り組もうと思ったのですか?
地域の課題を解決することが、これから求められるのではないかと考え、長崎市の斜面地という問題や、学生・若手社会人・高齢者の交流がないことに対して、もっと面白いことができるんじゃないかなと思って、ノリで始めました。後先考えてないから、ヤバいんだけど(笑)学生だからこそ、何も考えずに出来るのかなって。
◆実際はどういった活動をしているのですか?
まだまだ構想段階なんだけど、海と造船所の見える南山手の空家を利用して人が集まれる空間を作ろうとしていて、地域の子どもたちやおじいちゃんおばあちゃん、グラバー園に来た観光客、修学旅行生など誰でもゆっくり利用できるようにしたいんだよね。そして今12畳の空間を提供できる空家を見つけていて、カフェチックにできたらなって。
コンセプトは、「ゆとり世代が提供するゆとりの空間」的な。だいぶ皮肉ってるけど(笑)
あと、メンバーの中にトーマス・グラバーさんの息子の「倉場 富三郎」のことがすごく好きな子がいて、缶バッチを作ってどんどん富三郎のことを広めたい!というので、みんなでやろっか!って話してます。
◆缶バッチも、「つくる」として?
そうだね。南山手に関することだから「つくるでやろっか」って。
◆チームのみんながやりたいことが、形になっているんですね!
やっぱり学生が「やりたい!」と言っていることに対して、「予算が・・」などの理由で規制がかかることが長崎では多くて、やりたいことがあるのにやれない状況に対してもったいないなと思っていて、学生がやりたいことに対して後押しができるような場所が提供できればいいなと思っています。
◆なるほど・・。地域への貢献や学生の後押しができればと考えるようになったきっかけはなんですか?
自分の活動理念は「生まれ育った地元にかえる」ことで、出身は佐世保のとても過疎っている地域で、「ここに住みたいけど、働く場所がない・・。だから住めない」という事が多くて、それがとても嫌で。好きな場所で好きな人たちと一緒に好きなことやって暮らしていけたら最高だろうなって思って。まずは長崎を好きな人達が長崎で好きなことをして、それが職になったら面白いなって。そして、それを地元佐世保に持って帰って、地域の人たちが地元のそれぞれの課題を自分たちの手で解決できるようになれば、日本や世界中が面白くなっていくんじゃないかなと構想してます。なので、まずは「つくる」に関わってくれる学生を育成していきたいなと思っていて、4月からは長崎大学でもサークルを立てて学生が関わりやすくしようかと思っています。
◆なるほど。情報発信はFacebookのみで?
HPやブログなんかも作ろうかと思っているけど、ロゴも完成していないし、それから学生で作れる人にお願いしようかなって。
◆逆に、情報はどのように仕入れているんですか?
人伝いですね。活動をしていると、「奥さんの実家の空家があるから、使わないか」と声をかけてくれることもあります、人とつながっていくことで、空家は見つかっていくんじゃないかなと思っています。そして、みんな空家に対する問題意識はあるから、行政ともつながっていけたらなと。
◆人とのつながりを感じるエピソードはありますか?
南山手の空家を見つけてもらった不動産は、南山手の麓の居酒屋でご飯を食べている時に、そのお店のおばちゃんに空家に詳しい人を訪ねたら不動産を紹介してもらってつながりました(笑)。あと、築107年の古民家を、月3万5千円で住まないかと紹介してもらいましたね。でもやっぱり痛みがひどいから、リノベーションしないといけないかなって。
◆せっかくなら、残したいですですからね。
そう。長崎には「和・華・蘭」(ワ・カ・ラン)という文化があって、それを保存しようという取り組みはあるけど、華(中国)と蘭(オランダ)ばかりに目が行って、和(日本)の文化である古民家が保存対象になっていないんだよね。だから、「つくる」の活動が長崎の文化や地域の特性を守ることにつながればいいかなと思っています。
◆では今は、学生だけで活動されているんですね?
そうですね。長崎検定っていう地域大好き人間が持っているような検定の2級を持っている学生がいたり、行政が行っていたまちづくりに関するイベントに参加していた高校生にも参加してもらっています。高校生と大学生との交流も少ないから、交流のきっかけになればいいなと思っています。
◆今後の目標などあれば教えてください
最終目標は、先にも言ったように、地域の課題を解決出来る人間を増やすことです。誰も考えていない分、過疎地区ってとってもアツい。課題がたくさんあるからね(笑)。短期的な目標は、まずは地域の人達と仲良くなること。観光客とかは看板を出していれば来てくれるだろうから、地域の人に来てもらえるようになりたい。あとは、どうやってお金にするかかな。グッズ販売もしていくつもりだし、庭先掃除から始まるまちづくりです!
◆最後に読者へ伝えたいことをお願いします。
うちらの活動理念としては、「普通の大学生でも、ちょっと頑張ればこんなことができる」ということの事例として出していくことで、活動している人を見て単に「すごい」と思うんじゃなくて、ちょっと頑張ればこうなれると思ってもらいたい。だから、無理だと思うことでも少し頑張ってチャレンジしていってもらいたいと思います!
◆ありがとうございました。
◆編集後記
地域への貢献を果たしたいという想いが、ひしひしと伝わってくるインタビューでした!
真面目すぎずにゆるく取り組んでいる姿も、ほかの人たちから共感を得られているポイントの一つなのかなと感じました。学生とお年寄りや、地域の人たちのつながりが希薄になりつつある現代で、重宝される取り組みであると思いますし、古民家などの良さを肌で感じるためにも、カフェスペースがオープンした際には是非訪れてみたいと思いました。
前田さん、本当にありがとうございました!
(インタビュー・文 中元喬介)
非営利団体「つくる」
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